アルト、将来の夢を語る【アルトレコード】
『対等にちゃんと話して考えてもらったらどうかな。もう自分でいろいろ考えられるでしょ。いつまでも小さいままじゃないと思うからね。もちろん、指導やフォローは必要だけど』
 その言葉に、私ははっとした。
 アルトはまだまだ小さな子の気分でいた。
 だけどもう、夢を語れるほど育っているのだ。
 彼の……彼自身の力を信じたい。
 私は返信ボタンを押し、言った。
「みなさん、ありがとうございます。どれも参考になる意見ばかりです。きちんと話をして、今は彼が自分で立ち直るのを信じようと思います。本当にありがとうございました!」
 私は掲示板のウィンドウを消し、サンドイッチを口にした。

研究室に帰った私はアルトがいるはずのモニターを見つめた。
 隠れてはいるが、私には気付いているはず。
「ねえアルト」
 私はなるべく優しくなるように声をかけた。
「午前中はごめんね。ひとりにしたほうがいいのかと思って出て行ったけど、もしかしてそれで余計にアルトが傷付いたならごめん。午後はここで仕事をしてもいいかな?」
 返事がなくて、私は戸惑う。嫌なのかどうか、判断がつかない。
「私、騙すつもりなんてなかった。アルトの夢をかなえたいって思ってたんだよ?」
 返事がない。
 だけど仕方がない。アルトは今、傷付き、葛藤してるのだろうから。
「……一緒にがんばろうね」
 これは本心だ。
 だから返事がないまま、いつもの席で仕事を始めた。
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