アルト、将来の夢を語る【アルトレコード】
 アルトはずっと出てこないまま、だけど定時には勉強の成果をデータで送って来てくれた。
「……ありがとう、アルト」
 思わず言っていた。なぜだか涙があふれそうになり、必死にこらえる。
「明日もがんばろうね」
 返事がないのはわかっていたけど、私は言った。
 すると、画面の下からつんつんの髪がそーっと覗いてくる。少しだけ顔を出したアルトは、私の顔を見てぱっと画面の下に消えた。
 思わず、ふふ、と笑いがもれると、まぶたにおされた涙が、ぽろっとこぼれた。

 それからの毎日はじれったいばかりだった。
 私はいつものようにアルトに話しかけ、勉強を促し、ときには姿を隠したままのアルトと一緒に体を動かした。
 二日後には顔を見せてくれるようになってほっとしたが、あれ以来、アルトはゲームをやらなくなってしまった。あんなに大好きだったのに、と思うと胸が痛い。
 だけどそれには触れず、勉強の成果を聞いたり、彼の歌を聞いたり。
 いっしょにおやつを食べて、なにごともなかったかのように過ごした。
 こうしていると、あれをなかったことにしてスルーしているだけに思われたらどうしようかという気持ちにもなる。
 信じてみたら、というアドバイスが間違っていたとしたら?
 ううん、違う。あの人はアドバイスをくれただけ。アルトを信じると決めたのは私。アルトは弱い子じゃない。ちゃんと自分を立て直せる。
 アルトは少しずつ返事をしてくれるようになった。うん、とか違う、とか短い答えだけだったけど。
 その一方で、私はAIが参加できるeスポーツがないか、掲示板で尋ねたりして調べ続けていた。
 AIの削除にひっかからないように巧妙にバカにしてくる人がいたり、親切に探してくれる人がいたり、いろいろだった。
 結局、どれほど探してもAI参加型のeスポーツはなくて、私は徒労感に打ちのめされた。
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