アルト、将来の夢を語る【アルトレコード】
アルトがすねてから二週間ほどたったころ。
私はその日も重い頭を抱えて研究室の前に立った。日々の仕事に加えてeスポーツのことを調べているので、寝不足が続いている。
鏡面加工のドアに映る自分はどんよりと暗い顔をしていた。
いけない。
私は自分の両頬を叩いた。
しゃきっとしなくちゃ。アルトが気にしちゃう。
無理矢理に笑顔を作ると、ピンと背筋を伸ばして指を生体認証キーにタッチした。
シュッと空気の抜けるような音がして扉が開く。
「おはよう、アルト!」
すでにモニターの電源が入っている。ということはアルトは起きているはずだ。
「……おはよう、先生」
アルトはなんだか気まずそうだ。
私の心臓がどきっと鳴った。どうしてこんなに気まずそうなんだろう。
昨日まではちょっとずつ以前のアルトに戻ってきているようだったのに。
「どうしたの? なにかあった?」
「……ううん」
元気がなさそうで、私は心配になる。
「なにかあったのなら言って? 相談にのるから」
「……なんでもないから」
拒絶するように言われ、私は胸を押さえた。
やはり彼の信頼を裏切った私は、もう信用されていないのだ。