転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
雪莉は柄にもなく瞳に涙を溜め、グズグズと鼻を啜って両親に助けを求めた。
「僕と婚約するのが、泣くほど嬉しいんだね? かわいいなぁ……。食べちゃいたいくらいに……」
「……っ!」
声にならない悲鳴を押し殺せば、殿下は瞳に薄っすらと浮かぶ雫を唇で拭い取った。
(な、なんでこんなことに……?)
まさか自分が、いずれ目麗しく成長する攻略対象の1人に甘い言葉を囁かれるなど思いもしない。
「きゅ、きゅう……」
雪莉はあまりに衝撃的に展開に耐えきれず――ぐるぐると目を回してその場で意識を失った。