転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
殿下が入学を取り止めたら、2人の恋は一生成就しない。
(そんなの、絶対に嫌……!)
恋ラヴァの世界に転生した以上、雪莉はこの目でロンティナの成立を見届けるまでは絶対に死ねなかった。
だから――彼の申し出に対する答えは、最初から決まっている。
「む、無理です!」
勢いよく吐き捨てると、大きなカブを引っこ抜くように両手を使って手を離そうとした。
しかし、びくともしない。
(なんで……!? こんなにひょろっとしているのに!)
さすがは、腐っても攻略対象様だ。
ハイスペキラキラ王太子として成長するまではあと十年もあるのに、すでにか弱い少女の力では振りほどけないほどの筋力を身に着けているようだった。
「いやだなぁ……。僕のありがたい申し出を断る人なんて、聞いたことがないのに……。空耳が聞こえてきたみたいだ……」
彼は微笑むのを止めてから低い声でそう呟くと、雪莉の拒絶に聞こえないふりをした。
(こっわ……。目が死んでるんだけど……!)
今日始めて言葉を交わしただけなのに、なぜこれほど執着されているのか。
さっぱり理解できずに震え上がる。
(だ、誰か助けて……!)