転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 彼らは苦い顔をしながら、渋々周りを囲むのを止める。

(あとはティナの、気持ち次第かぁ……)

 ロンティナを誰よりも愛するユキリは、ヒロインが他の男を好きになるシーンなど想像したくもない。

(これは、三角関係……?)

 ピコーンと閃いて、ようやく考え事を止め――前を向いた時、それは起きた。

「ユキリ」
「わっ……!」

 聞き馴染みのある声に名前を呼ばれたかと思えば、ぼふんと固い何かにぶつかったあとーー身動きが取れなくなったのだ。

「むぐ……っ。むぐう……!」

 呻き声を上げて手足をバタバタと動かしたところで、強い力で掴まれたせいでうまく抜け出せない。
 そしてーー。

(何が一体、どうなっているの~!?)

 ユキリが心の中で叫んだ直後。
 耳元で、声が囁かれた。

「ユキリから抱きついてくるなんて、思わなかったよ。嬉しいなぁ……」
「で、殿下……! み、みんなが、見てる……!」
「見せつけてるんだよ」
「えぇ……っ!?」
「早いうちに僕達が強い絆で結ばれているって周囲に知らしめておけば、余計なトラブルを起こさなくて済むでしょ?」

 悪びれもなくそう語るマイセルに、ユキリは戦慄する。
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