転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
殿下がこの恋愛学園でするべきなのは、ユキリと愛を育むのではなく――ティナとロンドの仲を引っ掻き回す、当て馬として活躍することだ。
(私と殿下がさっさと心を通じ合わせて、この学園をひと足早く退学するわけにはいかないんだってば……!)
パニックに陥ったユキリは、1人で考えているのが馬鹿らしくなったらしい。
(もう! こうなったら、ユイガに助けを求めるしか……!)
大声を上げて弟に助けを求めるため、行動に移しかけた直後――。
「殿下……?」
――不測の事態が起き、姉の思惑は失敗に終わる。
ユキリとマイセルが密着し合う光景を目にした女子生徒が、今にも泣き出しそうな声で彼を呼んだからだ。
(今の声は……)
ユキリはその美声を耳にして、恐る恐る振り返る。
「ごめんなさい……!」
――そこにいたのは恋ラヴァのヒロイン、ティナだった。
(嘘でしょ……!?)
瞳から大粒の涙を溢して走り去っていく姿を目にして、自身の瞳が驚愕に見開かれるのを感じる。
自分がロンドとティナの恋を応援していると知る殿下が細い身体を抱きしめる力を弱めた隙を狙い、勢いよくその腕から逃れた。