転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 だからこそ、彼が言葉を紡ぐまで生きた心地がしないまま、この場に佇んでいた。

「ほんとに、手伝ってくれんだな?」
「もちろん!」
「……わかった。あんたの言葉、信じてやるよ」

 ロンドの言葉を耳にしたユキリは、
 このあとに起きるであろう最悪の展開を回避するのに成功してほっと胸を撫で下ろす。

(このまま推しに嫌われたら、どうしようかと思った……)

 ユキリにとって幼馴染コンビから嫌われるのは、世界の終わりと同義だ。
 ロンドの誤解が解けたのであれば、これからは今まで通りクラスメイトとして接すればいい。
 針の筵としか思えない視線を受け続ける必要がないだけでも、助かったと言う気持ちで、いっぱいだった。

「オレがそばにいられない時、ティナに変な虫がつかないように見張ってろ」
「了解であります!」

 ユキリがぴしっと両足を揃えて敬礼をすれば、目を丸くしたロンドが笑う。

「変な奴」

 そんな感想を抱いて口元に微笑みを浮かべた彼は、そのまま用は済んだとばかりに教室を去っていく。

(推しから、面白い女扱いされてしまった……!)

 叫びたい気持ちでいっぱいになったユキリは、拳を握りしめてぐっと耐える。
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