転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って！

　それが彼女らしいと思うべきか、どれほど言い寄ってもなんの反応も示さない姿に悲しむべきか悩んでいると――。

「つかず離れずの距離を保っていて、どうするんだ。姉さんが好きなら、誰も手出しできないほどに愛を伝えろ」

　その様子を間近で見ていた双子の弟、ユイガから難色を示された。

「珍しいこともあるんだね。僕はユキリに、ふさわしくないって言っていたくせに」
「ここに通い始めて、よくわかった。貴様はこの学園に通う男子学生の中で、2番目に相応しい」
「1番目は？」
「もちろん、俺だが」
「君はブレないね……」

　マイセルは呆れたように肩を竦めた。
　しかし、頑なに自分を拒絶し続けていた7年間を思えば、一歩前進と言うべきだ。

「まぁ、でも……。君に認められて、嬉しいよ」
「ちょ、調子に乗るな！　俺は、姉さんの幸せを願っている。今のところ、貴様が2番目だったと言うだけで……！」
「はいはい。わかっているよ。ユキリと君の好感度を下げないように、頑張るね」
「ふん……」

　マイセルは満面の笑みを浮かべ、不貞腐れたように顔を逸らすユイガと話を終えた。

(さて……。これからどうやって、僕を好きになってもらおうかな……）