転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って！

「ふん。調子に乗っていられるのも、今のうちよ」

　ザルツとダンスを踊るランカが、憎たらしい二組のカップルを睨みつけながらそう吐き捨てた。

「本当に、成功するのですか」
「当たり前じゃない。任せて」

　ランカとザルツが耳元で囁き合いながら悪巧みをしているなど、ティナとユキリは気づけなかった。

(ルアーナ公爵令嬢は、ザルツとペアを組んだんだ……。攻略対象なら、誰でもいいのかな……？)

　2人が踊る様子を軽蔑の眼差しで見つめたユキリは、心の奥底でモヤモヤとした気持ちが渦を巻くのを感じて顔を顰める。

(なんだか、すごく嫌な予感……）

　なぜそう思うかについて答えを出せずにいると、あっと言う間に曲が終わってしまった。
　ダンスホールで踊っていた人々は壁際に歩き出す。

　いよいよ、ユキリとマイセルの出番だ。

「それじゃ、行こうか」
「……うん」

　優しく微笑む彼に頷き、手を取り合い――ダンスホールへ歩みを進めた。

(うまく、踊れる気がしない……）

　――曲が始まれば、生徒達が一斉にパートナーとともにリズムに乗って身体を揺らす。
　マイセルの動きに合わせて足を動かしたユキリの不安は、的中した。