転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 2人の穏やかな婚約生活が、夢と消えるのだ。
 それだけは絶対に、避けねばならぬ。
 そう決意したマイセルは口元だけに笑みを浮かべて、言葉を紡ぐ。

「他の貴族達には、文句なんて言わせませんよ」
「しかし……。うちの娘は感情の起伏が乏しく……。殿下と会話が成立するとは……」
「じゃあ、僕とユキリが仲良くなったら婚約を認めてくださいます?」
「まぁ……。そう、ですね……。難しいとは思いますが……。殿下がどうしてもと仰るのでしたら……」
「わかりました」

 どうにも歯切れの悪い言い方には引っかかりを感じるが、言質さえ取ればこちらのものだ。

(これから全身全霊をかけてユキリを愛し、信頼を勝ち取れば……。この子は僕だけのものになる……)

 その時を夢見たマイセルは薄暗い笑みを浮かべると、優しく目元を和らげてユキリの寝顔を堪能するのだった。
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