転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
兄弟は抱き合い、癒やしの力によって病に苦しんでいた子どもの体調が回復したのを喜んだ。
(どんなに認めたくないと、現実を否定したとしても……。聖女は本当に、私なんだ……)
ずっと実感が沸かなかったユキリも、自分の使役した力によって傷や病が完治する姿を見れば、認めるしかない。
「ああ、よかった! 本当に……!」
ザルツは涙を流しながら、奇跡が起きたとこの光景を目にして喜んでいる。
弟を抱きしめるのに必死で、こちらのことなど眼中になさそうだ。
(今なら彼の目を盗んで、逃げ出せるよね……?)
治安の悪いスラム街を、女ひとりで歩くのは不安でしかないが――。
このまま彼と一緒に神殿へ戻ったところで、神殿内でのいざこざに巻き込まれるのは間違いなかった。
(尻込みしている場合じゃないよ……!)
着のみ着のまま、無一文で。
ゆく宛もなくさまよい歩いたところで、ユキリはモブだ。
ヒロイン補正などないのだから、当然命を落とすことだってあり得るだろう。
(恋ラヴァのヒロインが、助け出されるのを待つだけのお姫様みたいな性格をしていたら……! 私はティナを推そうなんて、考えなかった! あの子を見習わなくちゃ!)
ユキリは震える身体を必死に動かして、どうにか後退し――この場から勢いよく逃げ出した。
(どんなに認めたくないと、現実を否定したとしても……。聖女は本当に、私なんだ……)
ずっと実感が沸かなかったユキリも、自分の使役した力によって傷や病が完治する姿を見れば、認めるしかない。
「ああ、よかった! 本当に……!」
ザルツは涙を流しながら、奇跡が起きたとこの光景を目にして喜んでいる。
弟を抱きしめるのに必死で、こちらのことなど眼中になさそうだ。
(今なら彼の目を盗んで、逃げ出せるよね……?)
治安の悪いスラム街を、女ひとりで歩くのは不安でしかないが――。
このまま彼と一緒に神殿へ戻ったところで、神殿内でのいざこざに巻き込まれるのは間違いなかった。
(尻込みしている場合じゃないよ……!)
着のみ着のまま、無一文で。
ゆく宛もなくさまよい歩いたところで、ユキリはモブだ。
ヒロイン補正などないのだから、当然命を落とすことだってあり得るだろう。
(恋ラヴァのヒロインが、助け出されるのを待つだけのお姫様みたいな性格をしていたら……! 私はティナを推そうなんて、考えなかった! あの子を見習わなくちゃ!)
ユキリは震える身体を必死に動かして、どうにか後退し――この場から勢いよく逃げ出した。