転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 ユキリは文句など言う資格はなかった。
 それが嫌ならば神殿になど顔を出さずに、彼の婚約者で居続けることを選べばよかったのだから……。

(関係を絶ったはずの元婚約者が今さら現れたところで……。殿下も、迷惑なはず)

 涙を流して再会を喜ぶマイセルの姿など、夢想するほうがおかしいとわかっている。
 だが――ユキリはそうした反応が見られたらどれほどいいことかと、心の奥底で望む自分がいると気づいてしまった。

(失ってから始めて気づくことも、あるんだ……)

 ユキリはそれを痛感しながら、恋愛学園での日々を思い浮かべる。

(楽しかったなぁ……)

 ティナとロンドが笑顔で言葉を交わし合う姿を肉眼で目にできたのは、ユキリにとって一生の思い出だ。

(私が恋愛学園に通うのは、難しいだろうけど……。またみんなと、言葉を交わし合えたらいいな……)

 ティナ、ロンド、ユイガ。
 そして、マイセル。

 彼らが笑顔を浮かべて自分の名を呼ぶ姿を脳裏に思い浮かべたユキリは、大好きなロンティナとともに過ごした学生生活がどんどんと殿下と過ごした幼い頃の記憶に上書きされていくのに焦った。
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