転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
(なんで……?)

 いつの間にか、マイセルと出会って7年もの時間が経過している。

『僕の婚約者になってほしい』

 そう求婚されてから、こちらの心を射止めようと必死になってアプローチをしかけてくる姿には恐怖しか感じなかったはずなのに――。

(私、本当は……。殿下に愛を囁かれて……すごく嬉しかったんだ……)

 ここが乙女ゲームの内容と酷似している世界だから。
 自分は彼にはふさわしくないと思い込んでいるせいで、心の奥底に芽生えた気持ちに見ないふりをしていただけだと気づいてしまった。

(私が恋ラヴァに転生したのは、ティナをロンドルートに導いてハッピーエンドを迎えさせるためだと思っていたのに――)

 自分の役目は、それがゴールではなかったのかもしれない。

(私は、殿下の気持ちに応えたい……。愛を囁いてほしい……。そう、思うのは……。彼が、好きだから……?)

 一度その気持ちを自覚したら、今までのように気のないフリなどできるわけがない。
 ユキリは彼に会いたくて、居ても立っても居られなくなった。

(殿下はもう、私以外の素敵な女性と巡り合ったかもしれない。それでもいい。彼を好きだったのに気づくのが遅れた、自分が悪いんだから……)

 たとえこの恋が叶わなくたって、構わない。
 ただ、自分が言いたくなったから、伝えようと思った。
 それだけだ。

(見返りを求めるなんて、おこがましいもん……)

 どこか遠い目をしたユキリは迷いを振り払うように首を振ると――マイセルに再び会うため、恋愛学園を目指した。
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