転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「は、はい!」

力強く抱き寄せられて、ようやく我に返る。
しゃっきりと背筋を伸ばしたユキリは、首からグギギギと嫌な音を響かせて殿下を見上げた。

「な、何……?」
「言わなくても、わかるよね?」

こちらに凄むマイセルは口元こそ緩めているが、目は笑っていない。

(や、やっぱり! 怒ってる……!)

ユキリは恐れていた事態が起きたと、全身を震わせて怯える。
その様子を満足そうに見つめた殿下は、パンパンと手を叩いて大立ち回りを終えたロンドとユイガに視線を移した。

「なんだよ。おいしい所、取るなって話か?」
「俺達がいなければ、こいつらは退けられなかった。感謝こそされても、文句は言われる筋合いはない」
「わかっているよ。2人とも、ありがとう」
「別に、てめぇのためじゃねぇからな! ラクア男爵令嬢が傷ついたら、ティナが悲しむ! それを防ぐためだ……!」
「ふん……」

ロンドはツンデレのお手本みたいな反応をすると、制服の汚れを手で払ってからティナの隣へ並び立つ。
そしてユイガは敵から奪った剣を投げ捨て鼻を鳴らすと、剣呑な表情を和らげた。
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