転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「ありがとう、殿下。私、何も考えずに神殿を飛び出しちゃったから……。たくさん迷惑、かけたよね?」
「それでいいんだよ」
「そうかな……?」
「うん。後片づけは、僕とユイガの仕事だ。ユキリは何もしなくていいからね。今までも、これからも。ずっと……」

 考えるよりも先に行動してしまうユキリ。
 行動するよりも先に熟考しがちなマイセル。

 2人はお互いに足りないところを補い合う、最高のパートナーになる。

「まるで、ロンドとティナみたい……」
「あの2人を理想のカップルだって言うなら、いいよ」
「何が……?」
「あれをお手本にして、僕達の仲も深めよう」

 マイセルの言い方には若干の棘がある。
 その言い方に疑問を感じたユキリは、どこか不貞腐れた様子で唇を窄めた。

 (あれ呼ばわりなんて、酷いよ……)

 誰にでも優しく、誰からも好かれる王太子の仮面が、ガラガラと音を立てて崩れ去るのを感じたからだ。

(聞かなかったことにしよう……)

 ユキリは苦言を呈したい気持ちをぐっと堪え、しっかりと頷いた。

「そうだね……」

 彼はユキリの反応に目を見張る。
 どうやら、否定されるとばかり考えていたようだ。
 こちらが素直に頷いたのが意外で仕方ない様子がひと目で感じ取れた。
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