転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 ユキリは涙を流しながら懇願してくる神官達と目を合わせたあと、悲しそうに目を伏せた。
 ティナのように慈悲深く清らかな心を持って生まれたわけではないからこそ、彼らを助けることはできないと判断したからだ。

(ごめんなさい……)

 心の中で何度も謝罪をしていると、隣から含みのある声が聞こえてぎょっとした。

「あと1人……」

 神殿のトップである司祭を拘束した神殿は今、壊滅状態にある。
 指揮官を失った組織の立て直しを目論んだところで、元通りになるのは長い時間がかかるはずだ。

(これほど甚大な被害を与えたのだから、もう充分なんじゃ……?)

 まだやるのかと驚きを顕にしたユキリの隣で、マイセルは嫌なカウントダウンをしながら微笑みを深めた。

(ザルツにも、逃げろと言っておくべきだったかも……)

 神殿と縁を切って、あのまま実家で弟と仲良く暮らし続けていれば、マイセルの毒牙にかかることはないが……。

 どちらにせよ彼は、恋愛学園の生徒だ。

 ここで見つからなくても、今まで通りあの学校に顔を出したら2人は顔を合わせ――学び舎で騒ぎになるだろう。
< 226 / 245 >

この作品をシェア

pagetop