転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「どこに行くつもりだ」

 だが、それは叶わなかった。
 ユイガに低い声で凄まれたからだ。

(なんだか、デジャビュ……)

 一番去ってまた一難とは、まさしくこのようなことを言うのだろう。
 姉と言葉を交わせる喜びに打ち震えた彼は、ユキリを逃さないと言わんばかりに抱きしめる力を強めた。

「ずっと立ち話をしているのは、疲れちゃうでしょ……?」
「この腕を離したら、姉さんがまた口を閉ざしてしまうかもしれない」
「そんなこと……」
「ユイガ。大事な話がある。移動しなさい」
「父さん……」

 ユイガも、父親には逆らえないようだ。
 渋々身体を離す代わりに、腕を絡めて横に並ぶ。

(さすが。父は強しだね)

 ユキリは助かったと感心した様子で弟と並んで歩き、応接間へと向かった。
< 26 / 245 >

この作品をシェア

pagetop