転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「愚民ども、お退きなさい! わたくしは、そこの女に用事があるんですの!」
「無礼な奴と、姉さんを会話させるわけがないだろ。失せろ」
「な……! わたくしのお父様は、公爵ですのよ!? あなた達の爵位はずっと下ですもの。逆らう権利などなくてよ!」
金色の髪を揺らして叫ぶ少女は、どうやら公爵家の令嬢だった。
家名は不明で、恐らくユイガもどこの誰かまでは把握していない。
(お父さんなら、わかるかな……?)
ユキリは父親に、探るような視線を向けた。
すると、彼はガタガタと全身を小刻みに震わせながら彼女の家名を口にした。
「ルアーナ公爵令嬢……」
「ええ。殿下の婚約者に最も近い女、ルアーナ公爵家のランカとは、このわたくしのことですわ!」
胸を張って高らかに宣言した公爵令嬢は、どうやら自身の家名に誇りを持っているタイプのようだ。
(こっちが爵位に驚いて、ひれ伏せるのを待っているみたいだけど……。普通にしていても、いいのかな……?)
どう考えてもよくないはずだ。
そう結論づけたユキリは弟の背中に隠れながらドレスの裾を両手で摘んでカーテシーをしかけた。