転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 恋愛シミュレーションゲームから、戦略RPGにジャンルが変化するのだ。

『普通に恋愛したいなら、聖女ルートには絶対入るな』

 前世でそのルートをプレイしたプレイヤーの酷評レビューの内容を思い浮かべたユキリは、頭を掻きむしりたい気持ちでいっぱいになった。

(さ、最悪だ……)

 彼に対してこれっぽっちも恋愛感情を抱けないユキリにとって、この選択肢はバッドエンド一直線のものでしかない。

(殿下と結婚するか、神殿で聖女として一生独身でいるか……)

 究極の二択を迫られ、何度も視線をさまよわせて狼狽えた。

「そ、それは……」
「ユキリ。僕の婚約者になって。一緒に、愛を育もう」

 ユキリは叫び出したい気持ちをどうにか抑え込むと、頭を抑えて天を仰ぐ。

(どうして、こうなるの……!)

 彼と婚約を結んだら、紆余曲折の末恋愛学園でロンドと愛を育むティナの姿が見られなくなってしまう。
 それだけは絶対に嫌だと、何度も左右に首を振って拒絶した。

「姉さんを離せ! 嫌がっているだろう!」
「これは照れ隠しだよ」
「どこをどう見たら、そんなふうに読み取れるんだ!」
「どんなに否定したって、心の中では僕を求めている」
「妄想をぶつけるのも、いい加減に……!」
「口を閉ざさすのは、お前のほうだ。ユイガ、殿下に突っかかるのは止めなさい!」
「ふぐぐ……っ!」
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