転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!

 シナリオライターと司会の声優がポンポンと会話を続ける姿を脳裏に思い描いたランカは、これだと閃く。

(彼女の名前は、確か……)

 ――それこそが、マイセルに抱き上げられた少女。
 ラクア男爵家のユキリだった。

(あの女は、ただのモブですわ! 恋ラヴァが始まる前に死ぬのが確定しているんですから、わたくしはその日が来るのをずっと待ち続けていればいいだけ……!)

 ランカが倒すべき敵は、彼女ではなく恋ラヴァのヒロイン――ティナ・ローンズだ。
 ユキリなど相手にならないと、茶会の日は2人が急接近するのを見て見ぬふりをした。
 だが――社交場では、どこへ顔を出しても彼女の話で持ち切りだ。

「殿下がついに、婚約者候補の中から意中のご令嬢を見つけたそうですわ」
「まぁ。それはめでたいですわね。お相手は、一体……」
「あちらにいらっしゃる、ルアーナ公爵令嬢に決まっているでしょう?」
「それが……。ラクア男爵令嬢なんですって」
「誰ですの?」
「ほら……。最近、王立騎士団に志願して、名を馳せた少年がいらっしゃったでしょう? あのお方の、お姉様なんだとか……」
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