転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って！

　どいつもこいつも、こちらを見てクスクスと馬鹿にしたような笑みを浮かべてくる。
　心ない視線に晒されたランカは、すぐさま音を上げた。

(一刻も早く、あの女の息の根を止めませんと……！)

　そう思い立ち、虎視眈々と機会を狙っていると――ついにその時がやってきた。

(見つけましたわ……！)

　ラクア男爵一家が服飾店から出てくる姿を目にして、真っ先に声をかける。

(なんなんですの!?　この女は……！)

　始めてユキリと言葉を交わしたランカは、苛立って仕方なかった。
　こちらが殿下に好意があると知った瞬間、彼女はマイセルに興味などないと言わんばかりの態度を取ったからだ。

(イケメン達に愛されて、困っちゃうアピールですの!?）

　怒りが収まらず、衝動的に手を振り上げてユキリを引っ叩こうとすれば――ある異変が起きる。

(これは……防護障壁!?）

　ラクア公爵令嬢は、自らの身を護る加護を展開したのだ。
　これは聖女にしか使えない特能であり、ランカはすぐさま例の没設定がこの世界に反映されているのだと確信した。