転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
満面の笑みとともに有無を言わさぬ声音で問いかけられた雪莉は、心の中で叫ぶ。
(駄目に決まってるでしょ……!)
彼は10年後、恋愛学園で恋ラヴァのヒロインと関係を深めるのだから――。
(ティナはロンドのものだって決まっているけど! 殿下が私みたいなモブを名前で呼ぶのは、解釈違いなの!)
唇を噛み締めて叫び出したい気持ちをぐっと押さえつけた雪莉は、はたと気づく。
(あれ……?)
ラクア男爵家のユキリなんて少女は、恋ラヴァには登場しない。
つまり、作中では語る必要のなかった名無しと言うわけだ。
(ちょっと、待って……?)
しかも、ただのモブではない。
自分には浅倉雪莉として、25歳まで生きた記憶があるからだ。
(これって……!)
この不思議な現象には、心当たりがあった。
二次元の世界では、今となっては当たり前となった展開。
それは――。
(私、恋ラヴァの中に転生しちゃったの……!?)
命を落としたあとに、異世界で別の人間として新たに生まれ変わること。
人々はそれを、転生と呼んだ。