転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
(最悪の場合は、手足を縛られて監禁とか……?)

 恐ろしい光景を思い浮かべ、背筋が凍った。

(うん。やっぱり、そう言うのって私は無理だし……。ティナを危険な目に合わせるのも嫌だよ!)

 ロンティナをこよなく愛するユキリは、遠くを見つめながら叶わぬ願いを抱く。

(どうにかして、ルアーナ公爵令嬢を好きになってもらえないかな……?)

 開け放たれた窓から身を乗り出し、2人のいる鍛錬場をじっと見つめていたからか。
 どうやら執事に、そこへ行きたいと勘違いされてしまったようだ。

「ラクア男爵令嬢。鍛錬の様子を、近くでご覧になりますか?」
「いえ……。別に、興味があるわけじゃ……」
「きっと殿下も、お喜びになりますぞ!」

 お茶会の時は気乗りしていなかったバゼラも、こちらの人となりを知って「是非坊ちゃまの伴侶に」と太鼓判を押している。

(嫌だなぁ……。なんで外に出たんだって、ユイガに怒られそう……)

 だが、ここで「嫌です」とはっきりと断るのもよくないだろう。
 ユキリは渋々頷くと、窓を閉めて鍛錬場に向かった。
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