転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「~!」
「茹でタコみたいになっちゃって……。ほんと、かわいい。僕の大好きな女の子……」

 声にならない悲鳴を上げれば、彼の瞳が熱を帯びる。
 その光景に不穏な気配を感じ取り、この場から逃亡を測れば――。

「本当に、油断も隙もないな……!」

 ちょうどいいところに、助け舟が出された。
 汗を流すために水浴びをしに行った弟が、戻ってきたのだ。

「ユイガ! 戻ろう!」
「姉さん。少し待っていてくれ。あの男は生かしてはおけん……!」
「いいから!」

 ユキリは待っていましたとばかりに彼の手を掴む。
 その後マイセル1人をこの場に残し、慌てて王城の中へと戻って行った。
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