転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
 顔を合わせる度に父親の顔が痩せこけて行くのを感じ、ユキリは悲しそうに目を伏せた。

(恋愛学園への入学まで、あと2年かぁ……)

 ルアーナ公爵家は、何度王家から釘を刺されても懲りない。

(私達と同い年だから……。最悪の場合は、激怒したユイガと直接対決なんて話にもなりかねないよね……?)

 心労の耐えないユキリは、父親との再会を喜んでばかりもいられずに肩を落とした。

「姉さん? さっきから、浮かない顔ばかりしているが……。どうした。具合でも悪いのか?」

 双子の弟はこちらに探るような視線を向けてくる。
 首を振って問題ないと無言で伝えれば、殿下が口を挟んできた。

「男爵も、災難でしたね」
「いえ……。立場の弱い私達がこうして命を繋いでいられるのも、殿下のおかげです」
「お礼を言うのはこちらの方です。素敵なご息女と、かけがえのない友人と交流を深められたのですから……」
「はぁ? 誰がいつ、貴様と仲良くなったんだ」
「こら。ユイガ……」

 四六時中一緒にいれば、殿下の人となりもだんだんわかってくる。
 一時期よりは棘のある部分が鳴りを潜めていたが、それはあくまで無意識のようだ。
< 70 / 245 >

この作品をシェア

pagetop