転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
「姉さん? 俺と伯爵家が、どうしたんだ?」

 不思議そうにユイガから問いかけられても、なんでもないと気丈には振る舞えなかった。

(お父さんの乗った馬車を襲ったルアーナ公爵令嬢……。ラクア男爵家と同じことを始めたタダベヌ伯爵……。存在ない私と、同業者の養子になった弟……)

 頭の中で、カチリカチリとパズルのピースが嵌っていき……。
 一枚の絵が完成する。

(やっぱり私は、馬車の事故で死ぬはずだったんだ。作中でラクアが殿下を恨んでいたのも……。ルアーナ公爵令嬢が彼を愛したのが始まりだから……!)

 そんな推察を終えたユキリは身を乗り出す。
 そして、テーブルを挟んで対面の席に座っていたマイセルの胸に飛び込んだ。

「殿下! 私のことは、もういいから! 今すぐ、ルアーナ公爵令嬢を好きになって!」

 なんの前触れもなく、血相を変えて叫んだからか。
 殿下は驚きを隠せない様子で不思議そうに首を傾げた。

「何を言っているんだい? 僕はユキリ以外を愛する気はないよ」
「絶対駄目! 殿下には私よりも相応しい運命の人がいるの! その人と夫婦になるのが一番だけど、みんなが幸せに暮らすためには、やっぱり……!」
「姉さん。落ち着け。大丈夫だから……」
「殿下が誤った選択をしたせいで、私とお父さんは死ぬかもしれないんだよ!?」
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