転生モブ令嬢は、死ぬ予定でした 王太子から溺愛されるなんて、誰か嘘だと言って!
(どうしよう。明るくて元気なティナが、無口無愛想な女の子になっていたり、ロンドが幼馴染を大嫌いな男子に成長していたら……!)

 素人の二次創作よりも酷い光景を目撃するために、ユキリはここに転生してきたわけではないのだ。
 ーーそんなのは絶対に、許せなかった。

「それにしても、ルアーナ公爵家もやることが露骨だね。タダベヌ伯爵に頼んで、男爵と同じことをやり始めるなんて」

 そんなこちらの思考を読み取るように――殿下からある家名が紡がれた瞬間、ユキリは大きく瞳を見開いた。

(お父さんと、同じことを……?)

 ラクア男爵家はきらびやかな宝石を加工した装飾品の売買を、生業としている。
 祖父の代で王家の目に止まり、爵位を賜ったのだ。
 先祖代々続く他の家と比べて歴史が浅いため、何かと下に見られることが多かった。

(うんん。重要なのは、そっちじゃない……)

 マイセルの口から紡がれた重要な単語を、ユキリは真っ青な顔で口にする。

「ユイガ、タダベヌ……」

 ――そう。タダベヌ伯爵家は、恋ラヴァ本編で弟が名乗っていた家名だ。

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