25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
持ち帰った料理を真新しいテーブルの上に広げていくと、佳奈の嬉しそうな声が食卓に響いた。

「わあ、どれも美味しそう!」

実際、どの料理もおいしくて、にぎやかで楽しい団欒となった。

食事の片づけも終わり、美和子は佳奈たちの新居を後にする。
天気もいいし、ちょっとこの辺を散策するのもいい。大型書店のカフェに入って、ゆっくり読書っていうのも悪くない──そんなふうにのんびり考えながらエレベーターを降りると、そこに真樹がいた。

「……あれ、真樹さんも今、帰るところなんですか?」

「そうなんだ。新婚夫婦の家に長居は無用だろう?」

そう言ってから、真樹はすっとこちらを見て尋ねる。

「美和子さん、このあとの予定はなにかある? もし何もないなら、俺に付き合ってくれないか。行きたい本屋があるんだ」

──これよ!この男の本性!

なぜ予定があるかないか、答えなきゃならないの?
誰が頼んでもいないのに、したいことを当然のように口にしてくる。
行きたいなら、一人で行けばいいじゃない。
しかも「本屋」って、なんという偶然なの。

うん、偶然。偶然ってあるある。こういうの、タイミングが合っただけ。
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