25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
美和子は、あの夜からの一週間を、自分の人生と真剣に向き合って過ごした。
悩み、迷い、それでも自分の心の声を聞こうとし続けた。そして、答えを出した。
1週間後、あの日と同じレストラン。
信吾の目を見て、美和子は静かに言った。
「信吾さん……よろしくお願いします」
それは、自分の意思で選んだ、はじめての“決断”だった。
こうして、二人の交際が始まった。
信吾は、どこまでも誠実に、美和子の心を大切にしてくれた。
迷うたび、「君はどうしたい?」と問いかけてくれた。
誰かの期待ではなく、“自分の意思”で選び、生きることを、信吾はそっと導いてくれた。
交際は順調だった。
大学4年になっても、就職先は決まらなかったが、それでも美和子は諦めずに簿記の勉強を続けた。
「結婚してから就職先を探してもいいじゃないか。今、できることをすればいい」
信吾はそう言って、美和子を励まし、支えてくれた。
しかし――
美和子の意思に反して、両親によって勝手に“お見合い”の日程が組まれていた。
彼女は、すべてを信吾に正直に話した。
「相手には、きちんと自分の言葉で断ってくる」
信吾の顔に、うっすらと陰が差した。
けれど、美和子は真っ直ぐに言った。
「大丈夫。私は、信ちゃんと一緒にいたい。それが……私の決めたことだから」
信吾は、言葉を発する代わりに、強く、力いっぱい、美和子を抱きしめた。
お見合い当日。
美和子は覚悟を持って、その場に臨んだ。
相手の名前は、滝沢真樹。
二人きりで話そうと庭に出たとき、不意に庭石につまずき、体がよろけた。
咄嗟に真樹が支えてくれた――その直後だった。
美和子が礼を言おうとした瞬間、彼の唇が突然、自分の唇を塞いできた。
何が起きているのかわからず、動けないでいる間に、何度も、何度も……唇を重ねられた。
「……なんてことを……!」
身体を震わせながら、美和子は叫んだ。
「このお話は、お断りします!」
その場を足早に去った。
帰宅した美和子は、両親にきっぱりと言った。
「お見合い相手とは結婚できません。
結婚を考えている人がいます」
父は、静かに言い放った。
「おまえの立場をわかっているのか?
親の決めた男と結婚すればいい。この話は以上だ」
その冷たい言葉に、美和子はもう一度、自分の心を決めた。
――家を出よう。
向かった先は、信吾のアパートだった。
お見合いのあとに会う約束をしていた。信吾は、何も言わず、美和子を迎え入れた。
「相手にちゃんと断ってきた。
両親にも、結婚を前提に付き合ってる人がいると話したの」
美和子はそう言いながらも、真樹にされたキスが心に引っかかっていて、信吾の顔が見られなかった。
「……何かあったのか?」
信吾が尋ねた。
「どうして……俺の目を見ない?」
その声に、美和子はとっさに唇に指を当ててしまった。
信吾は、その仕草からすべてを悟った。
「……まさか、キスされたのか」
美和子は答えられなかった。
次の瞬間、信吾は美和子の顎を持ち上げ、優しく、しかし強くキスをした。
顔を背けようとする美和子の肩を引き寄せ、何度も、何度も、唇を重ねた。
まるで、上書きするように――過去を、恐怖を、迷いを、ぬぐうように。
息が上がった頃、唇を離して、信吾が問う。
「……俺と、今すぐ一緒になる覚悟はできてるか?」
美和子はうなずいた。
「後悔しないか?」
その問いに、潤んだ瞳で信吾を見据えながら、はっきりと答えた。
「後悔なんて……しない」
その夜、美和子は初めて、信吾に身を預けた。
夜が明けるまで、何度も、何度も――
魂ごと、抱きしめられるように。
そして、ほどなくして、美和子は佳奈を身ごもった。
悩み、迷い、それでも自分の心の声を聞こうとし続けた。そして、答えを出した。
1週間後、あの日と同じレストラン。
信吾の目を見て、美和子は静かに言った。
「信吾さん……よろしくお願いします」
それは、自分の意思で選んだ、はじめての“決断”だった。
こうして、二人の交際が始まった。
信吾は、どこまでも誠実に、美和子の心を大切にしてくれた。
迷うたび、「君はどうしたい?」と問いかけてくれた。
誰かの期待ではなく、“自分の意思”で選び、生きることを、信吾はそっと導いてくれた。
交際は順調だった。
大学4年になっても、就職先は決まらなかったが、それでも美和子は諦めずに簿記の勉強を続けた。
「結婚してから就職先を探してもいいじゃないか。今、できることをすればいい」
信吾はそう言って、美和子を励まし、支えてくれた。
しかし――
美和子の意思に反して、両親によって勝手に“お見合い”の日程が組まれていた。
彼女は、すべてを信吾に正直に話した。
「相手には、きちんと自分の言葉で断ってくる」
信吾の顔に、うっすらと陰が差した。
けれど、美和子は真っ直ぐに言った。
「大丈夫。私は、信ちゃんと一緒にいたい。それが……私の決めたことだから」
信吾は、言葉を発する代わりに、強く、力いっぱい、美和子を抱きしめた。
お見合い当日。
美和子は覚悟を持って、その場に臨んだ。
相手の名前は、滝沢真樹。
二人きりで話そうと庭に出たとき、不意に庭石につまずき、体がよろけた。
咄嗟に真樹が支えてくれた――その直後だった。
美和子が礼を言おうとした瞬間、彼の唇が突然、自分の唇を塞いできた。
何が起きているのかわからず、動けないでいる間に、何度も、何度も……唇を重ねられた。
「……なんてことを……!」
身体を震わせながら、美和子は叫んだ。
「このお話は、お断りします!」
その場を足早に去った。
帰宅した美和子は、両親にきっぱりと言った。
「お見合い相手とは結婚できません。
結婚を考えている人がいます」
父は、静かに言い放った。
「おまえの立場をわかっているのか?
親の決めた男と結婚すればいい。この話は以上だ」
その冷たい言葉に、美和子はもう一度、自分の心を決めた。
――家を出よう。
向かった先は、信吾のアパートだった。
お見合いのあとに会う約束をしていた。信吾は、何も言わず、美和子を迎え入れた。
「相手にちゃんと断ってきた。
両親にも、結婚を前提に付き合ってる人がいると話したの」
美和子はそう言いながらも、真樹にされたキスが心に引っかかっていて、信吾の顔が見られなかった。
「……何かあったのか?」
信吾が尋ねた。
「どうして……俺の目を見ない?」
その声に、美和子はとっさに唇に指を当ててしまった。
信吾は、その仕草からすべてを悟った。
「……まさか、キスされたのか」
美和子は答えられなかった。
次の瞬間、信吾は美和子の顎を持ち上げ、優しく、しかし強くキスをした。
顔を背けようとする美和子の肩を引き寄せ、何度も、何度も、唇を重ねた。
まるで、上書きするように――過去を、恐怖を、迷いを、ぬぐうように。
息が上がった頃、唇を離して、信吾が問う。
「……俺と、今すぐ一緒になる覚悟はできてるか?」
美和子はうなずいた。
「後悔しないか?」
その問いに、潤んだ瞳で信吾を見据えながら、はっきりと答えた。
「後悔なんて……しない」
その夜、美和子は初めて、信吾に身を預けた。
夜が明けるまで、何度も、何度も――
魂ごと、抱きしめられるように。
そして、ほどなくして、美和子は佳奈を身ごもった。