25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
唇を離すと、彼女の瞳が、驚愕に大きく見開かれていた。

一瞬、時が止まったような気がした。

「……放してください」

震える声だった。

「え?」

俺の腕の中で、彼女は小さく震えていた。

「何をなさるんですか!」

美和子の声が、次の瞬間、はっきりとした怒気を帯びる。

「あなたみたいに、人の話を聞こうとせず、自信満々で、自己中心的な人──私は大嫌いです!」

その言葉は、鋭く、刃のように俺の胸を裂いた。

「このお話は……お断りさせていただきます!……どうぞお気遣いなく」

きっぱりと、はっきりと。

彼女は俺の手を振り払い、踵を返して庭の出口へと早足で去っていった。

俺は、その場に立ち尽くしていた。

振袖の裾が風に揺れ、彼女の背中が遠ざかる。

声をかけることも、追いかけることもできなかった。

──27歳にして、人生最初の大失恋。

誰にも拒まれたことがなかった俺にとって、その一言一言が、衝撃だった。

そしてこの瞬間が、彼女との25年に及ぶすれ違いの、すべての始まりだった。


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