25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
まだ空が青く染まる前、
かすかな鳥の声とともに、真樹は目を覚ました。

重なるように寄り添ったままの美和子が、
静かな寝息を立てている。
その穏やかな息遣いを感じながら、真樹はそっと目を伏せた。

腕の中で眠る彼女の体温が、まだそこにある。
けれど、昨夜のことは一線を越えてはいない。

真樹はそっと腕をほどいた。
起こさないように、呼吸を合わせ、身じろぎひとつせず慎重に。

彼女の寝顔を一度、静かに見つめる。
長いまつげ、少し開いた唇、寝乱れた髪。

(風邪をひく……)

思わずそう思って、立ち上がる。
そっと寝室に向かい、彼女のベッドの布団を丁寧にめくる。
整えたままのベッドに、わずかに触れた彼女の気配。

そして、再びリビングへ戻る。
彼女の身体をそっと両腕に抱き上げた。

彼女を胸に抱え、ゆっくりと寝室へ運ぶ。

彼女の温もりを感じながら運ぶその重みが、
なぜだか心地よくて、嬉しくて。

ベッドに横たえ、毛布を肩までかけてやる。
彼女の髪を一房だけそっと耳にかけ、
ほんの一瞬、指先で頬をなぞった。
愛しさがこみ上げた。

真樹は静かに部屋を出た。
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