25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
「また連絡する、かあ……」
ぽつりとつぶやいて、メモを見つめる。
(忙しいのよね、きっと。社長さんだもの。私なんかに、かまってる暇なんて……)
スマホを手にしかけて、すぐに置いた。
(ううん、メッセージなんて送らないほうがいい。
私のほうが、振り回されちゃう。ちょっと落ち着こう……)
深呼吸をひとつして、美和子は心を整えようと決めた。
今日は、携帯を見ずに過ごしてみよう。
そう自分に言い聞かせるように、スマホの電源をそっと切った。
手帳を開くと、ふと目に留まった文字。
――「信吾 命日」
(ああ……もうすぐだったんだ)
佳奈と一緒に行く年もあったけれど、
今日は……一人で行こう。
(信ちゃん……ごめんね。なんだか、いろんな感情で心がいっぱいで。
でも、あなたに会いたくなった。静かな場所で、ちゃんと自分と向き合いたいの)
信吾の墓は、電車を乗り継いで二時間以上かかる場所にある。
でも、今から出れば、夕方までには帰ってこられる。
よし――
気持ちを切り替えるように、美和子は立ち上がり、支度を始めた。
ネイビーのシャツワンピースを選び、薄くメイクをして、鞄に手帳と財布と文庫本を入れる。
(今日は、自分のための日。
過去にも、今にも、流されないで。
ちゃんと、一人になって、自分に戻ろう)
玄関の扉を開けると、ひんやりとした初夏の風が、そっと頬をなでた。
ぽつりとつぶやいて、メモを見つめる。
(忙しいのよね、きっと。社長さんだもの。私なんかに、かまってる暇なんて……)
スマホを手にしかけて、すぐに置いた。
(ううん、メッセージなんて送らないほうがいい。
私のほうが、振り回されちゃう。ちょっと落ち着こう……)
深呼吸をひとつして、美和子は心を整えようと決めた。
今日は、携帯を見ずに過ごしてみよう。
そう自分に言い聞かせるように、スマホの電源をそっと切った。
手帳を開くと、ふと目に留まった文字。
――「信吾 命日」
(ああ……もうすぐだったんだ)
佳奈と一緒に行く年もあったけれど、
今日は……一人で行こう。
(信ちゃん……ごめんね。なんだか、いろんな感情で心がいっぱいで。
でも、あなたに会いたくなった。静かな場所で、ちゃんと自分と向き合いたいの)
信吾の墓は、電車を乗り継いで二時間以上かかる場所にある。
でも、今から出れば、夕方までには帰ってこられる。
よし――
気持ちを切り替えるように、美和子は立ち上がり、支度を始めた。
ネイビーのシャツワンピースを選び、薄くメイクをして、鞄に手帳と財布と文庫本を入れる。
(今日は、自分のための日。
過去にも、今にも、流されないで。
ちゃんと、一人になって、自分に戻ろう)
玄関の扉を開けると、ひんやりとした初夏の風が、そっと頬をなでた。