25年ぶりに会ったら、元・政略婚相手が執着系社長になってました
ソファに身を預け、お茶を片手にファッション雑誌をめくっていた美和子は、不意に聞こえた玄関の音に指を止めた。
――鍵の音。
まさか、と思うと同時に、胸が高鳴る。
あの墓参りの日以来、真樹は美和子の部屋の鍵を持っていた。「これ以上心配させないでくれ」と言って譲らず、唖然とする美和子を余所に、勝手に合鍵を手にしたのだ。
え、会食じゃなかったの?
混乱する頭で状況を整理するより先に、今の自分の格好に思い至る。
肌にしっとりとなじむ、シルクのスリップとローブ。あまりにも柔らかく、あまりにも女らしすぎるそれを着ている姿を、真樹に見られるなんて――。
「着替えなくちゃ…!」
慌てて立ち上がり寝室に向かおうとしたそのとき――
すでに部屋の中にいた真樹が、じっと彼女を見ていた。
その視線に射すくめられる。
「見ないで……」
美和子は目を逸らし、逃げるように寝室へ足を向けた。
だが、次の瞬間、背後から真樹の手が伸びてきて、逃げる腕を優しく、けれど確実に捕らえた。
「美和子……これは反則だろう?」
耳元で低く響く声。
振り向いたその先に、目を細めて笑う真樹がいた。
「会食は?」
「先方が途中で急用だって。早めにお開きになったんだよ」
真樹はいつものようにさらりと言い、囁くように続けた。
「――ただいま」
「…お帰りなさい」
自然に口をついたその言葉に、美和子はしまった、と肩をすくめる。
けれどもう遅い。
真樹はゆっくりと彼女を抱き寄せ、その腕に力を込めた。
「顔、見せて」
「いやです……こんな格好」
「どうして?綺麗なのに」
真樹は喉の奥で笑いながら、美和子の髪に唇を落とした。
敬語は使うな――そう命じられたことを思い出す。
それなのに、つい「いやです」と言ってしまった。
このままじゃまた、あの“罰”が待っている。
甘く、長く、焦らされる悦び。
触れてほしいところには絶対に触れないくせに、
体の奥に眠っていた官能を呼び覚まし、
理性を奪うほどの快楽で、美和子をじわじわと“調教”していく。
――あぁ、もう。
美和子は、胸の奥で小さく溜息をついた。
この男の腕の中では、抗えない。
すっかり慣らされてしまった。
甘やかに、そして無慈悲なほどに。
――鍵の音。
まさか、と思うと同時に、胸が高鳴る。
あの墓参りの日以来、真樹は美和子の部屋の鍵を持っていた。「これ以上心配させないでくれ」と言って譲らず、唖然とする美和子を余所に、勝手に合鍵を手にしたのだ。
え、会食じゃなかったの?
混乱する頭で状況を整理するより先に、今の自分の格好に思い至る。
肌にしっとりとなじむ、シルクのスリップとローブ。あまりにも柔らかく、あまりにも女らしすぎるそれを着ている姿を、真樹に見られるなんて――。
「着替えなくちゃ…!」
慌てて立ち上がり寝室に向かおうとしたそのとき――
すでに部屋の中にいた真樹が、じっと彼女を見ていた。
その視線に射すくめられる。
「見ないで……」
美和子は目を逸らし、逃げるように寝室へ足を向けた。
だが、次の瞬間、背後から真樹の手が伸びてきて、逃げる腕を優しく、けれど確実に捕らえた。
「美和子……これは反則だろう?」
耳元で低く響く声。
振り向いたその先に、目を細めて笑う真樹がいた。
「会食は?」
「先方が途中で急用だって。早めにお開きになったんだよ」
真樹はいつものようにさらりと言い、囁くように続けた。
「――ただいま」
「…お帰りなさい」
自然に口をついたその言葉に、美和子はしまった、と肩をすくめる。
けれどもう遅い。
真樹はゆっくりと彼女を抱き寄せ、その腕に力を込めた。
「顔、見せて」
「いやです……こんな格好」
「どうして?綺麗なのに」
真樹は喉の奥で笑いながら、美和子の髪に唇を落とした。
敬語は使うな――そう命じられたことを思い出す。
それなのに、つい「いやです」と言ってしまった。
このままじゃまた、あの“罰”が待っている。
甘く、長く、焦らされる悦び。
触れてほしいところには絶対に触れないくせに、
体の奥に眠っていた官能を呼び覚まし、
理性を奪うほどの快楽で、美和子をじわじわと“調教”していく。
――あぁ、もう。
美和子は、胸の奥で小さく溜息をついた。
この男の腕の中では、抗えない。
すっかり慣らされてしまった。
甘やかに、そして無慈悲なほどに。