響け!月夜のアジタート
声をかけられて彼は横を見る。老紳士が穏やかな笑みを浮かべながら立っている。老紳士からは魔力を感じ、レオンハルトは彼が自分と同じ魔法使いであるとわかった。

「ええ。あんなに素敵な歌声は初めて聴きました」

「昨日、あまりにも素晴らしい歌声だったので録画魔法を使ってしまいました。よければ見ますか?」

その言葉にレオンハルトの目が見開かれる。録画魔法とは、頭の中に記録したい出来事を焼き付けて忘れられなくする魔法だ。そしてその記憶は他者と共有することができる。

「ぜひお願いします」

あの歌声をもう一度聴きたい。その気持ちと同じくらい、あの舞台には何かが隠されているのではという思いがレオンハルトにはあった。

「メモワール!」

老紳士が呪文を唱えると、レオンハルトと彼の目の前に小さなスクリーンが現れる。そして、そのスクリーンにAliceが映し出された。彼女の素晴らしい歌声が響き渡る。

老紳士は彼女の歌声を純粋に楽しんでいる様子だった。レオンハルトはAliceの歌声を聴きながら、彼女の動きをよく観察する。やはり、リズムと足のステップが合っていない。
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