響け!月夜のアジタート
マーガレットの体に冷や汗が浮かぶ。そうしている間にも、「三十!!」「四十!!」と声が上がる。

(これって人身売買!!あたしは商品ってこと!?)

マーガレットのくぐもった声は、観客たちの声によってかき消されていく。マーガレットの値段はどんどん上がっていく。恐怖に震える彼女は、観客席の中に他の人とは違う目で自分を見ている人物に気付いた。

(フョードルさん?)

黒服を着た護衛に囲まれたフョードルはこちらを悲しげな目で見ている。その隣には、楽しそうに舞台を見つめるマリヤの姿があった。

(なるほど。マリヤ・アルロフスカヤがこの闇オークションの主催者ってことね)

一体、どれだけの人たちがこの場所で売られたのだろうか。マーガレットの中で怒りが生まれていく。しかし、縛り上げられた自分にできることはただ相手を睨み付けることだけだ。

(体が自由だったあの人を捕まえたのに!)

ガチャガチャとマーガレットが動くたびに鎖が音を立てる。決して外れることはない。その時だった。
< 42 / 59 >

この作品をシェア

pagetop