響け!月夜のアジタート
「すごい行動力だね。その勇気を賞賛するよ」

オルハンが拍手を送り、リズはまた戸惑って顔を赤くする。レオンハルトはフッと笑った。

「これからリズは探偵事務所の一員だ。何か困ったことがあればすぐに言いなさい」

「はい。改めてよろしくお願いします」

リズの瞳は期待と不安に満ちている。その不安をレオンハルトは取り除いてあげたいと強く思った。人は魔法も強い力もない。しかし、決して弱い存在ではない。現にリズは行動し、マリヤ・アルロフスカヤの罪を白日の元に晒したのだから。

「さて、リズの必要なものを買い揃えてトロンペーテへ帰ろうか」

レオンハルトの言葉にアントーニョが「賛成!!」と手を挙げる。

「ずっと寒いとこにいるから風邪を引いたみたいだ。喉がイガイガするぜ」

「トーニョ、風邪を引いたのかい?おかしいな。馬鹿は風邪を引かないって聞いたんだけど」

オルハンの言葉にアントーニョの額に青筋が浮かぶ。

「テメェ、もう一回言ってみろ!!」

「何度も言ってあげるよ。馬鹿は風邪を引かない」

アントーニョとオルハンが戦闘体制を取る。驚いた様子のリズにレオンハルトは苦笑しながら声をかけた。

「事務所が見慣れた光景だよ。リズもすぐに慣れる」

「そ、そうなんですか?」

カナタとマーガレットが二人の間に入る。探偵事務所で一日一度は見る光景だ。レオンハルトは隣にいるリズを見て思う。

(ここにリズがいてくれて嬉しい)
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