アルト、猫カフェへ行く【アルトレコード】
「とにかく、警察を呼びましたから」
 店員が強めに言う。
 負けを悟った男女は、抵抗を辞めて悄然と立ち尽くしていた。




 警察はほどなく到着した。
 男女は警察に「亡くなった猫に似ていて、どうしても欲しくなった」と言っていたが、警察に深く追求され、嘘だとバレて怒られていた。

 結局、男女はAI猫を窃盗しようとしたとして逮捕され、連行されていった。

「気が付いてくださってありがとうございます」
 店員さんは深々と私たちに頭を下げた。

「端末で連絡をとっておられた方にもお礼を申し上げたいのですが」
「いえ、彼は恥ずかしがりなので。私からきちんと伝えておきます」
 私は慌ててそう言った。

 店員さんは端末の中のアルトを私がビデオ通話をしていた相手だと思ったらしい。誤解だが、あえて否定はしなかった。

 帰路のビークルの中で、アルトは目撃したときのことを誇らしげになんども語った。いかに気が付いたか、いかにすばやくハッキングしたか。私は苦笑してそれを聞いていた。

 危ないことをしたのだから注意をしたいのだが、それは北斗さんに任せよう。きっと私も怒られるのだけど、アルトが貫いた正義を否定したくなかった。



 案の定、研究室に帰ったら映像をリアルタイムで見ていた北斗さんに叱られた。
「君たちねえ! なんであんな危ないことするの。たまたま暴力をふるわない人だったからよかったものを」
「すみません」
「先生は悪くないよ!」
 ホログラムになっているアルトが反論する。
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