アルト、猫カフェへ行く【アルトレコード】

「どんな仕事にもトラブルはつきものなのよ」
「そっか……大変だね」
 アルトは驚いたようにそう答えた。私も本当にそう思う。

 今日の猫カフェ体験はアルトの端末を通じて録画もされている。アルトの成長の記録をとるためだとは言われたけど、いつもならログだけ確認する北斗さんが録画までするなんて。意外に北斗さんも猫が好きだったりして?

 ビークルは順調に進み、私たちは猫カフェの入るビルに到着した。
「ここに猫カフェがあるの?」
「そうよ」
 なんの変哲もないビルだった。一階には普通のカフェがあり、二階が猫カフェだ。

 私たちの横を仲良さげな中年の男女が通り過ぎて入っていく。夫婦かな、と私はそれを見送った。将来、誰かと結婚したら自分もあんなふうに仲の良い夫婦になりたい。

 猫カフェに入ると受付で消毒を済ませ、バッグをコインロッカーに預ける。ここのAI猫は忠実に猫を再現しているため、バッグにいたずらしてしまう可能性があるからだ。

 二重扉は電子管理のようで、ロックももちろん電子式だ。遠隔でロックもできるようになっているようだった。猫の逃走防止だろうか、厳重だ。

 広々とした室内に入ると、まず目に入ったのは木を模した大きなオブジェだった。猫が登れるようにステップがついている。壁にもステップが設置され、天井には猫専用の透明な渡り廊下がある。

 平日のせいかお客さんはまばらで、猫たちは自由に歩き回ったりキャットタワーやハウスでくつろいでいる。
「うう……久しぶりの猫カフェ」
 私は喜びでうずうずしながらゆっくりと歩く。猫を驚かせないためだ。

 ソファで寝そべる猫を見つけ、そっとその横に座る。と、猫はのびー! と体を伸ばしたあと、すっと立ち上がって歩き去ってしまった。
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