アルト、猫カフェへ行く【アルトレコード】
「この人、猫を……」
 私はどう続けるか一瞬、迷い、それから言う。
「この人のバッグに、間違って猫ちゃんが入っていくのを見たので」
「本当ですか?」
 店員が驚いて男性を見る。

「ちげーよ、そんなことしてねーよ!」
 男が慌てて否定するが、私は眉を寄せる。「してねーよ」なんて言い方、なにかをしたに違いない。
 男はもう一枚の扉を開けようと手を伸ばす。店員はそれを止められない。証拠もないのに強く止めるなんてできないのだろう。

「……えい!」
 アルトの声がしたかと思うと、がちゃ、とロック音が聞こえた。
 男はもう一枚の扉を押すが、がちゃがちゃと音がするだけで扉が開かない。

「まさかアルト……」
「うん。電子ロックをかけた」
 一瞬で乗っ取っ(ハッキングし)てロックをかけるなんて。
 よくないことだとは思うが、この男が本当に窃盗犯なら……。

「お客様、念のためにカバンの中を見せていただけますか?」
 店員が言うと、男は激高した。

「なんだよ、俺がどろぼうしたってのかよ!」
「したよ!」
 間髪入れないアルトの声に、私は慌てる。

「アルト!」
「ぼく、見たんだ。そいつがカバンの中に猫を入れるのを!」
「この声……その端末か?」
 男が言い、私はばっと端末を握りしめる。
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