白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。
□
「遅い」
父が普段過ごしている屋敷の中で最も広いこの部屋に、紫陽はこれまで数える程度しか立ち入った記憶がない。父親と顔を合わせて話すこと自体少なかったというのもある。
案の定、苛立った父は紫陽が部屋に入るなり怒鳴りつけてきた。
「綾目に呼びに行かせたのはもう半刻近く前だぞ」
「申し訳ありません」
そう言われても、綾目から話を聞いてすぐここに飛んできた。だがその言い訳を口にしようものならさらに怒鳴られるのは目に見えているので素直に謝罪だけしておくのが得策だ。
「本当、少しは綾目を見習おうという気概がないのかしら」
父の後ろには母親の姿もあった。母は扇で口元を隠し、紫陽に蔑んだ目を向ける。
紫陽はもう一度「申し訳ございません」と頭を下げる。それで二人は一応溜飲を下げてくれたようだ。
「まあいい。そこに座れ」
「はい」
紫陽はゆっくり頭を上げ、視線を落としたまま父と向かい合った。
脇息に肘をかけた父は、眉間の皺を深く刻んだまま問いかける。
「紫陽。お前昨夜また勝手に外へ出ていたな?」
「……」
家を出るときはかなり気を張っていたから、恐らく帰ってきたとき誰かに見られたのだろう。疲れ切っていたから油断していた。
紫陽のその態度は肯定とみなされ、父は大きなため息をつく。
「遅い」
父が普段過ごしている屋敷の中で最も広いこの部屋に、紫陽はこれまで数える程度しか立ち入った記憶がない。父親と顔を合わせて話すこと自体少なかったというのもある。
案の定、苛立った父は紫陽が部屋に入るなり怒鳴りつけてきた。
「綾目に呼びに行かせたのはもう半刻近く前だぞ」
「申し訳ありません」
そう言われても、綾目から話を聞いてすぐここに飛んできた。だがその言い訳を口にしようものならさらに怒鳴られるのは目に見えているので素直に謝罪だけしておくのが得策だ。
「本当、少しは綾目を見習おうという気概がないのかしら」
父の後ろには母親の姿もあった。母は扇で口元を隠し、紫陽に蔑んだ目を向ける。
紫陽はもう一度「申し訳ございません」と頭を下げる。それで二人は一応溜飲を下げてくれたようだ。
「まあいい。そこに座れ」
「はい」
紫陽はゆっくり頭を上げ、視線を落としたまま父と向かい合った。
脇息に肘をかけた父は、眉間の皺を深く刻んだまま問いかける。
「紫陽。お前昨夜また勝手に外へ出ていたな?」
「……」
家を出るときはかなり気を張っていたから、恐らく帰ってきたとき誰かに見られたのだろう。疲れ切っていたから油断していた。
紫陽のその態度は肯定とみなされ、父は大きなため息をつく。