白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。



「もし万が一、五大妖の一人、狗神でも討ち取ったなら、お前のことを正式に涼風の陰陽師として認めてやろう」

「っ……!」


 息を飲んだ。認めてやろう、などと言われたのは初めてだった。

 紫陽は戸惑いながら、父の口から出た「五大妖」についての知識を総動員した。

 五大妖──この国にはびこる妖たちを統率する、いわば王のような存在。

 妖の中でも最強と名高い、ぬらりひょん、牛鬼(ぎゅうき)九尾狐(きゅうびのきつね)烏天狗(からすてんぐ)、そして今名前の上がった狗神(いぬがみ)の五人のことだ。


 と、そこまで思い出して、期待は気に萎んでいく。


(なるほど。無理難題を言って諦めさせる……もしくは身の程知らずに立ち向かった私が、そのまま返り討ちに遭って殺されるのを狙っているのね)


 一瞬でも期待した自分が馬鹿らしい。

 紫陽が諦めればそれで解決。家の恥は殺されても別に構わない。何かの間違いで妖の王を祓ったら、それはそれで涼風の家に箔が付く。どう転んでも涼風家当主である父に損はないわけだ。


「できぬと言うなら、二度と機会は与えん。どうだ?」

「やります」


 それでも、紫陽は即答した。万に一つでも、正式に陰陽師として認められる可能性があるのなら。それに伴って、娘としてこの人たちから彩目の半分程度でも愛してもらえる可能性があるのなら。



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