白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。



 この命を賭ける価値は十分にある。そう思った。



「そうか。期待している」

(期待なんて、小指の爪の先ほどもしていないくせに)


 娘が死地に向かおうとしているというのに、まるで他人事のような顔。

 頭を下げた紫陽は、もう一度彼らの顔を見る気になれず、視線を下げたまま退室した。






 この家にいれば、五大妖に関する噂は多く入ってくる。

 各地にいる陰陽師の家からもたらされた情報や、先祖が書き残した文献。正確な情報も有れば噂程度のものなど様々だ。


(狗神が住む地は、ここから歩いて二日、三日ほどの場所。他の妖王たちより近くにいるのに、わかっていることが少ない)


 五大妖の中でも最も強いとされるぬらりひょんや、人間嫌いで派手な行いが目立つ九尾の狐については入ってくる情報が多いが、狗神はそうではない。

 わかっている数少ない情報といえば、百五十年ほど前に突然現れ、それまで別の妖が就いていた王の地位を奪ったということぐらい。五大妖の他の王は、太古の昔から力を持ち続けている妖の一族の者ばかりのためその点は特徴的と言えよう。



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