白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。
とはいえ狗神が王になって以降、陰陽師に対して戦を仕掛けたり、大規模に人間を襲ったりするようなことは一度もしていない。
目立つ行動を起こさないのは五大妖の中では比較的弱いからと理解するのは希望的観測だろうか。
あとは、狗神の城の城下町には、どうやら人間も住んでいるようだという情報もあった。罪人やその家族、子孫など、人間社会にいられなくなった者を住まわせ、奴隷として働かせているという。
記録によると、これは近くの村の者たちから聞き取った噂話らしい。城や城下町自体には結界か何かで常に靄がかかっている状態で、実態を確かめた者はほぼいない。
……と、一刻近く調べてわかったのはこの程度。姿絵すらも出回っていないようだ。
父が五大妖の中でも狗神をと言ったのは、紫陽を送り込むことで何かしら様子を調べられると思ったからかもしれない。
(まあ、父様の思惑なんて何だっていい。私はただ、狗神を祓って陰陽師として認めてもらう。それだけ)
紫陽は腰の愛刀にそっと触れ、一人静かに息をついた。


