白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。
「もう、ろくろ首の姐さんたち! 紫陽様が困ってるでしょ! そして卵焼き美味しいです!」
もぐもぐと口を動かしながらそう注意する杏の声に、女性たちは一斉に振り返る。
「だってぇ、ずっと気になっていたんだもの。あの主が選んだお方よ?」
「そうそう、他の妖王の娘との縁談も頑なに拒んでいたあの主が!」
「たいそう美しくて、心根がまっすぐで、とても真面目なお方だって噂だったもの。ずっとお目にかかりたいと思っていたのです」
知らないところでずいぶんと興味を持たれていたようだ。だけど、そこそこ好意的な興味の持たれ方らしいというのは彼女らの反応から伝わってきた。
……というか、何だか妙な噂が流れているのだが。
「誰がそんな噂を……」
「あ、あたしです。あたしが流しました。だって紫陽様のこといつまでも隠して独り占めしてたら罰当たるかなあって思って」
「杏?」
身近すぎる犯人に眉をひそめた。
よくもまあ適当なことを。そんな噂を信じられてしまえば、実物がこんな無愛想で可愛げのない陰陽師では期待値を上げられていた分さらに悪印象になってしまうではないか。
そんな焦りから、紫陽はろくろ首の三人に向かって深く頭を下げた。
「噂のような者ではなくて申し訳ありません。……それと、いつも私などのために立派な食事の準備をありがとうございます。とても美味しいです」