白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。
□


「つまみ食いって何であんなに美味しいんだろうなぁ。普段の食事に出てくるのと同じものでもはるかに美味しい気がする。紫陽様もそう思いません?」


「あの……今さらですけど、妖も人間と同じようなものを食べるんですね……?」


 厨房を出た後、再び城内の探索が再開された。

 紫陽の素朴な疑問に対して、杏は「はいっ!」と大きく頷く。


「妖も色々いますが、多くは人間と同じように食事で栄養を補っていますよ。健康のためには一汁三菜が基本ですね!」

「妖は人間を食う。……私たちはそう教えられてきました」

「……ええ、そういう妖がいることも否定はできません。奴らは生きるために食うのは人間である必要はないのに、自分の力を誇示する目的で人間を食うんです」

「そうなのですか?」

「ああでも安心してください。我らが主はそういう妖を強く嫌っていますので、主の目の届く場所にそんな妖はいませんから。まあ、悪鬼が出ることは時々ありますが」

「え?」

「ああいえ、こっちの話」


 紫陽の中の常識が、一つ一つ塗り替えられていく。ここに来てからそんなことばかりな気がする。

 紫陽はゆっくりと歩きながら、杏と他愛ない話を続けた。


「紫陽様! 噂をすればあんなところに主が!」

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