最恐の狗神様は、笑わない少女陰陽師を恋う。



 逆に紫陽の妹の綾目(あやめ)などは、涼風家の中でも稀に見る霊力量を誇っており、将来一族の頂点に立つ陰陽師になるであろうと期待されている。両親の愛は、紫陽に注がれることがなかった分もまで全て彼女に注がれていた。

 少しでも良いから、自分も妹のように両親から笑顔を向けてもらいたい。

 幼い頃、その一心で研究と鍛錬を重ねた紫陽は、やがてその微弱な霊力でも妖を祓う方法を編み出した。


 それが、剣技と霊力の融合。

 刀に霊力を纏わせた状態で斬れば、通常は人間の武器は効き目がない妖にも傷を負わせることができる。

 血の滲むような努力で剣技を磨き、齢17になる頃には同年代の陰陽師に引けを取らない成果を上げられるようになった。紫陽が持つ程度の霊力では、本来あり得ない成果だった。


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