白銀の妖王は、笑わない少女陰陽師を恋う。
血の滲むような努力で霊力を刀にまとわせる繊細な技術と剣技を磨き、十代も半ばになる頃には同年代の陰陽師に引けを取らない成果を上げられるようになった。紫陽が持つ霊力量では、本来あり得ないことだった。
しかし、それでも両親は紫陽を認めることはなかった。むしろ紫陽のやり方を「野蛮だ」と切り捨て、涼風家の恥であると隠すようになった。今では妖退治の仕事は一切回されない。
それでも陰陽師として人々を守りたいという気持だけは残っており、昨夜のようにこっそりと家を抜け出して妖を祓う毎日だ。
「それにしても、昨夜のあの妖はいったい」
自室で丁寧に刀の手入れをしながら、紫陽は一人呟いた。
優秀な陰陽師の家系として名を上げ、時代が進むと共に広大になっていった涼風家の屋敷。
その屋敷の中で紫陽に与えられている部屋は、本邸の離れにある一室。離れそのものが使用人が寝泊りする部屋ばかりだが、その中でも一番小さな場所だ。部屋というより物置として使われることを想定されている場所なのかもしれない。
ただ、狭苦しい場所だが紫陽はこの場所をそれなりに気に入っていた。
──昨夜帰った後、あまり長いとはいえない睡眠で体力を回復させた紫陽は、何事もなかったかのようにいつも通りの一日を過ごした。