あなたを紹介できない理由 ―この恋は、規則違反です―

第1章 恋は履歴書では測れない

──今日も、ただいまを言う相手は花だけだった。

帰宅後、結衣はテーブルに飾った小さなガーベラに微笑んだ。

「今日もお疲れさま」って、誰かが言ってくれた気がして。

…そんな風に思わないと、やってられない。


ドラマの中では、みんな恋をして結婚していく。

結婚式で幸せそうに微笑むヒロインたちが、あまりにも現実離れして見えるのは、自分がその“観客”側だからだろう。

職場の後輩たちは次々に寿退社し、気がつけばランチも一人。

三十五歳──焦ってはいけないと思えば思うほど、静かな孤独が胸の奥でじんわり疼く。

「このままじゃ、いけないよね……」

ふと、思い立ってパソコンを開いた。

「結婚相談所」と打ち込み、検索結果を流し読みする。

いくつかのサイトを開いては閉じ、また開いて──目に留まった一つの名前。

「リーヴ・マリアージュ相談所」

洗練されたデザインに安心感があった。そしてなにより、そこに載っていたひとつの言葉が、胸に刺さる。

“条件じゃない、心に寄り添う結婚を。”

「……これだ」

結衣は、静かにマウスをクリックした。

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