あなたを紹介できない理由 ―この恋は、規則違反です―
翌日、驚くほど早く連絡が来た。

画面に表示された「リーヴ・マリアージュ相談所」の文字に少し緊張しながら、結衣は日時を決め、指定されたオフィスへ向かった。


ビルの一角、白と木目を基調にした落ち着いた空間。

窓際の観葉植物がやけに生き生きとして見えるのは、きっと緊張しているせいだ。

応対してくれたのは、穏やかな笑みを浮かべた男性スタッフだった。

年齢は……四十代くらいだろうか。落ち着いた声に、少し心がほどける。

「では、浅野さん。今の時点で、こういうお相手とお見合いしてみたい、というご希望はございますか?」

唐突な問いに、言葉が詰まる。

正直なところ、理想の相手なんて──考えたこともなかった。

「あの……趣味が合う人と……」

とっさに、当たり障りのないことを口にした。

「承知しました。では……趣味は、植物鑑賞ですね」

スタッフはメモを取りながら、優しく頷く。

――植物鑑賞。

それしかない趣味が、今になって恥ずかしくなる。

そもそも、そんな趣味を持った人と巡り会えるものなのだろうか。

不安と期待が、胸の奥で小さく揺れていた。

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